留学と友達

日本の英語教育の問題点5つ

日本では小学校から英語の授業が導入され、中学・高校と10年以上も英語を学ぶ環境があります。しかし、多くの日本人は英語でのコミュニケーションに苦手意識を持ち、「英語を話せるようにならない」と感じているのが現状です。その背景には、日本の英語教育における根本的な問題が存在します。ここでは、日本の英語教育の5つの問題点と、その解決策について詳しく解説します。

問題点1:実践的な英語力が身につかない

日本の英語教育は、「読む」「書く」に重点を置き、「話す」「聞く」スキルの育成が後回しになりがちです。特に、学校の授業では英文の読解や和訳が中心となり、日常会話で必要なフレーズを学ぶ機会が限られています。そのため、試験では高得点を取れるものの、実際に英語で会話しようとすると言葉が出てこないという状況が生まれてしまいます。

また、リスニングの授業では、教科書に沿った決まりきったフレーズを聞き取る訓練が中心であり、ネイティブが話す自然な英語に慣れる機会が少ないことも課題です。英語は言語であり、実際に使うことで身につくものです。しかし、日本の英語教育では、実践的なアウトプットの機会が極端に少ないため、習得した知識が活かされる場がありません。

この問題を解決するためには、授業内でスピーキングやディスカッションを取り入れ、英語を「使う」機会を増やす必要があります。また、ネイティブの発音に慣れるため、映画やドラマを活用することも効果的です。

 問題点2:文法と翻訳に偏った学習スタイル

日本の英語教育では、文法のルールを細かく学び、英語を日本語に訳すことが求められます。しかし、実際の英会話では、文法を正確に理解することよりも、スムーズに言葉を発することの方が重要です。日本語から英語に訳す癖がついてしまうと、英語を話す際に「日本語で考えてから英訳する」というプロセスが必要になり、会話のスピードが著しく低下してしまいます。

例えば、「英語を勉強しなければならない」というフレーズを、「I must study English.」と瞬時に言うことができる人は少なく、多くの場合は「英語を→勉強する→しなければならない→must…」と頭の中で組み立ててしまいます。このプロセスを繰り返しているうちは、英語を流暢に話せるようにはなりません。

この課題を克服するためには、日本語を介さずに英語を英語のまま理解する習慣をつけることが大切です。英英辞典を使ったり、英語のフレーズをまるごと暗記することで、よりナチュラルな英語が身につきます。

問題点3:英語を話す環境が整っていない

英語はコミュニケーションの道具であり、話さなければ上達しません。しかし、日本では英語を実際に使う機会が極端に少ないのが現状です。英語の授業は基本的に日本語で進められ、スピーキングの時間がほとんど確保されていません。また、日常生活で英語を使う場面がほとんどないため、学んだ知識が活かされることなく、忘れてしまうケースが多いです。

さらに、日本の教育システムでは、「間違えたら恥ずかしい」「正しい文法で話さなければならない」といったプレッシャーが強く、英語を話すことに対する心理的なハードルが高くなっています。間違いを恐れるあまり、積極的に話そうとしない生徒が多いことも、英語が上達しにくい理由の一つです。

この状況を改善するためには、学校内に「英語オンリーゾーン」を設け、英語だけで会話する環境を作ることが有効です。また、オンライン英会話を活用したり、英語のイベントに参加することで、英語を話す経験を増やすことが重要です。

問題点4:教師の英語力・指導力の不足

日本の英語教師の中には、文法や読解には精通しているものの、スピーキングやリスニングが得意でない人も多くいます。特に、中学や高校の英語教師は、受験英語の指導に重点を置いているため、会話のスキルを教える機会が少ないのが実情です。

教師が英語を流暢に話せない場合、生徒も英語を話す機会を持つことができません。その結果、英語の授業は日本語で行われ、英語を「学ぶ」時間はあっても、「使う」時間が確保されないまま終わってしまいます。

この問題を解決するためには、教師自身が英語を話すスキルを向上させる必要があります。ネイティブスピーカーとペアを組んで授業を行う「チームティーチング」の導入や、英語教師向けのスピーキング研修を強化することが求められます。

問題点5:受験英語と実用英語のギャップ

日本の英語教育は、大学受験や資格試験に重点を置いています。そのため、英語を「読む・書く」ことに関する問題は多く出題される一方で、「話す・聞く」能力を測る試験は少ないのが現状です。高校や大学の入試においても、スピーキング試験はほとんど導入されていません。

このような状況では、学生は「英語を話せるようになる」ことよりも、「試験で高得点を取る」ことを目標にしてしまいがちです。その結果、英語を使った実践的なコミュニケーション能力が身につかず、海外旅行やビジネスの場で英語を使う際に苦労することになります。この問題を解決するためには、受験の評価基準を見直し、スピーキング試験を導入することが重要です。例えば、英検やTOEFLなど、実践的な英語力を測る試験を高校・大学の入試に取り入れることで、英語を「使える」ようになることを目的とした学習が促進されるでしょう。 

英語教育

日本と他国の英語教育システムの違い

他国では、日本と異なるアプローチで英語教育が実施されており、それぞれの国が独自の教育システムを通じて英語能力を向上させています。これらの違いを理解することで、日本の英語教育に活かせるヒントが得られるかもしれません。以下に各国の特徴を詳しく説明します。

 韓国

韓国では英語教育が非常に重視されており、幼少期から塾やオンライン学習を活用する家庭が多いです。また、試験対策に加え、スピーキングやリスニングの訓練も重要視されています。学校教育では、徹底した試験準備が行われ、英語能力試験(TOEFLやTOEICなど)を通じて生徒の能力が測定されます。

さらに、韓国の多くの学校では、ネイティブスピーカーの英語教師を積極的に採用しており、生徒が実際に英語を話す機会が与えられるように工夫されています。また、ドラマや映画などのエンターテインメント分野においても英語が頻繁に使用されており、これが生徒のリスニング能力の向上に寄与しています。

ただし、この英語教育の強化が一部の生徒にとってプレッシャーとなり、過度な負担を生むケースも報告されています。そのため、バランスの取れたアプローチが求められています。

中国 

中国

中国では、英語教育が国家戦略の一環として推進されています。政府主導の教育政策により、小学校から英語を必修科目として取り入れ、多くの生徒が早い段階から英語に触れる機会を得ています。さらに、プライベート教育機関が急速に発展しており、特に都市部では、英語塾やオンライン学習サービスが広く利用されています。これらの機関では、試験対策に加え、スピーキングやリスニングといった実践的な英語力を養うカリキュラムが提供されています。

加えて、中国では国際的な英語試験(IELTSやTOEFLなど)の受験が進学やキャリア形成において重要視されています。このため、若い世代は試験対策を通じて高度な読解力やライティングスキルを磨いています。一方で、地方部との教育格差が課題として挙げられ、リソースの不足が実践的な英語教育の浸透を妨げる要因となっています。

今後の課題として、地方の教育環境の改善や、実生活で英語を使用する機会の創出が挙げられます。国際交流プログラムや英語を活用した地域活動を増やすことで、生徒たちがより実践的な英語能力を身に付けられる環境が求められています。

フィリピン

フィリピン

フィリピンは英語を公用語の一つとして使用しており、教育や日常生活で英語に触れる機会が多い環境です。このため、多くの国民が高い英語能力を持っています。特に、教育機関では英語が主要な指導言語として使用され、小学校から大学まで一貫して英語が学習やコミュニケーションの中心に位置付けられています。

さらに、フィリピンのコールセンター産業やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界では英語能力が不可欠であり、これが国民全体の英語力向上を後押ししています。また、国際的な留学生向けの英語学習プログラムも盛んで、語学留学の主要な目的地としての地位を確立しています。

家庭内でも英語が使われることが多く、日常会話や娯楽の一環として英語が自然に取り入れられています。テレビ番組や映画、音楽といったメディアが英語で提供されることも、国民の英語能力を高める一因となっています。このように、教育制度と社会環境が相まって、フィリピンでは高い英語能力が広く普及しています。

シンガポール

シンガポール

シンガポールでは英語が第一言語として教育されており、政府のバイリンガル政策によって英語力と母国語の両方が高度に発達しています。この政策の下で、英語は学校教育の主要言語であり、全ての科目が英語で教えられる一方、母国語の教育も必修科目として行われています。

日常生活においても英語が広く使用されており、ビジネス、行政、医療などあらゆる分野で英語が公式言語として機能しています。このような環境は、シンガポールの市民が早い段階で実践的な英語力を身につけるのに役立っています。

さらに、シンガポールは国際的なハブとして多文化環境が整っており、日常的に異なる文化圏の人々と英語を使って交流する機会が多いことも、英語力の向上に寄与しています。学校教育では、ディスカッションや問題解決型の学習が重視され、これが生徒のクリティカルシンキングと英語での表現力を育む重要な要素となっています。

シンガポールの成功は、英語を単なる言語として学ぶのではなく、生活の中で自然に活用する環境を整えることの重要性を示しています。

オーストラリア

オーストラリア

オーストラリアでは移民や多文化環境の影響で、英語教育が実践的かつ柔軟に行われています。授業ではディスカッションやプレゼンテーションが重視されており、生徒が自分の意見を英語で表現するスキルを磨く機会が豊富です。また、クリティカルシンキングや問題解決能力を育むことも教育の重要な目標とされています。

さらに、移民が多いオーストラリアでは、多様な文化背景を持つ生徒が集まるため、学校環境そのものが異文化理解と英語の実践力を自然に高める場となっています。英語を母国語としない生徒に対しては、専門のサポートプログラムが提供されることも多く、これにより全ての生徒が言語の壁を乗り越えて学べる環境が整っています。

また、オーストラリアの教育では、英語を学ぶことが単なる言語習得ではなく、社会参加やグローバルな視野を広げるための手段として位置付けられています。生徒たちは、日常生活の中でも自然に英語を使う環境に囲まれており、学校教育と家庭環境が相互に英語力向上を支える仕組みが整っています。

オランダ

オランダ

オランダでは小学校から英語教育が始まり、ほとんどの生徒が早い段階で英語に親しむ環境が整っています。授業では英語が主要科目として取り入れられ、読解やライティングだけでなく、スピーキングやリスニングのスキル向上にも力が注がれています。

さらに、オランダの社会全体では、英語が日常的に使用される機会が非常に多いです。例えば、テレビ番組や映画の多くが英語で放送され、字幕を通じて視聴されることが一般的です。このような環境が、自然な形で英語のリスニング能力を高める要因となっています。また、インターネットやデジタル教材の普及により、生徒たちは独自に英語を学ぶリソースにも簡単にアクセスできるようになっています。

オランダの英語教育が成功している背景には、教育カリキュラムの柔軟性や教師の質の高さが挙げられます。教員は英語教育の専門的なトレーニングを受けており、授業を通じて実践的な英語力を身に付ける支援を行っています。このようなアプローチにより、多くのオランダ人が国際的な場で活躍する英語力を持つことが可能になっています。

保護者ができる!幼少期の英語教育アイデア 

保護者ができる!幼少期の英語教育アイデア

幼少期は、子供の言語吸収能力が最も高い時期と言われています。この貴重な時期に保護者ができる工夫を加えることで、自然に英語に親しむ環境を作ることが可能です。以下に具体的な方法を挙げます。

英会話教室で子どもたちが講師と対話している様子 

ゲーム感覚で楽しく英語を続ける

遊びの中で学べる環境を作ることが、子供のモチベーションを高めます。例えば、英語のカードゲームやアプリを活用し、楽しく続けられる仕組みを提供しましょう。さらに、ボードゲームやフラッシュカードを使ったアクティビティ、あるいはデジタルツールを活用したインタラクティブな学習方法も効果的です。こうした遊び感覚での学習は、子供が英語に対して自然な興味を持ち、学習を習慣化する手助けとなります。また、友達や兄弟と一緒にゲームをすることで、競争心が刺激され、より楽しく英語を学ぶことができます。

親子で英語教育 本を読む、楽しい

親子で一緒に英語を学ぶ

親子で一緒に英語の本を読んだり、歌を歌ったりすることで、子供の興味を引き出せます。家庭内での英語環境を積極的に作ることが大切です。また、親子で英語の映画を観たり、簡単な英語での会話を試みたりすることで、自然な形で英語に親しむ時間を増やすことができます。親自身が英語学習に楽しみながら取り組む姿勢を見せることで、子供も「英語は楽しい」という感覚を持つようになります。さらに、親子で英語のゲームをしたり、料理のレシピを英語で試してみるといったアクティビティを取り入れると、実生活の中で英語を使う感覚を身に付けることができます。

家族が英語の映画を見ているシーン。

海外文化を楽しむ

英語圏の映画や音楽、料理を取り入れることで、言語だけでなく文化も楽しむことができます。たとえば、親子で英語字幕付きの映画を観たり、英語の歌を歌ったりすることで、子供が自然に英語に触れる機会を増やせます。また、英語のレシピを使って一緒に料理をすることで、学習が実生活と結びつき、より深い理解を得ることができます。

さらに、英語圏の伝統行事や文化に関連したアクティビティに参加するのも効果的です。例えば、ハロウィンやクリスマスのイベントに参加して、その背景や意味を学ぶことで、英語に対する興味を広げることができます。このように、英語を学ぶことが単なる勉強ではなく、新しい世界を知るきっかけとなるような環境を整えることが大切です。

 まとめ

日本の英語教育には多くの課題がありますが、他国の成功例を参考にすることで改善が可能です。また、保護者が家庭で英語教育をサポートすることで、子供の英語力向上に大きく貢献できます。長期的な視点で、実践的な英語力を育てる環境作りが重要です。

お子様の英語教育にお困りの方は弊社までお問合せください。

お問い合わせ - OSB EDUCATION